本日2020年4月7日夕方、「緊急事態宣言」が出されますが、経済活動の殆どが「民間のもの」である以上、最大の危機管理は、内部留保活用などの「自助努力」にあると考えます。
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今夕、国全体が高レベルの「危機管理モード」に入るからと言って、われわれは「打ち出の小槌」を手にしたわけでも何でもありません。
今の日本の財政力では財政的な対応には自ずと限界がありますので、「できることはできる、できないことはできない」の原則は変わりません。
政府は、表向き100兆超規模の「コロナ禍 経済対策」を発動すると発表するでしょうが、その「真水」(本当の財政支出発動部分)はその3-4分の1程度にとどまらざるを得ないでしょう。
それならばこのような時のためにと民間企業が蓄えた「内部留保 432兆円」を使うほうがよほど現実的ではないでしょうか。
432兆円といえば、日本のGDPの8割、国の一般会計予算総額の4年分以上に相当する金額なのですから。
この内部留保というのは俗語で、実際は税引き後の利益から株主配当等を行った残金が累積した「利益剰余金」ですから、株主の同意なしに勝手に費消できません。
しかし現状の日本の上場企業は、日銀のETF保有やGPIF運用など公的保有(つまり国民全体が大株主となっている状態)によって、相当程度「社会主義化」されています。しからばこれを逆手にとることはできる筈。
日銀やGPIFが、スチュワードシップ(責任ある受託者)に基づいて、公共の利益である「雇用維持」と会社自体の持続可能性のために赤字を容認し、その穴埋めを利益剰余金で行えばよいのです。
国民全体の財産を背景に、長期保有を前提に投資している公的資金ですから、これを保全するためには、当該企業自体の持続可能性を維持することが最重要であることに異論を差し挟む余地はないでしょう。
とすれば、経営者や資本家は、一時的に赤字を容認(その部分は利益剰余金を取り崩し)してでも、従業員や設備を維持し、いつでも反転攻勢がかけられるように体制を保っておくことが求められます。
こういう危機に臨んでこそ、内部留保を適切に活用できない経営者や、短期的利益確保に固執する近視眼的ステークホルダーはポンコツの誹りを免れないでしょう。
冒頭述べた通り、社会全体の共益費である税金、それを財源とする公的支出が極めて乏しい以上、これに過度に期待しても致し方ありません。人口減少国家において、「公的支援の規模が小さすぎる」と不平不満を述べても何等の解決にはつながらないでしょう。むしろ、今こそ、民間における自助のマインドを高めることが大切だと感じています。
国民一人一人に対する、最終的な危機管理およびセーフティネット整備は無論、国・地方政府の大切な仕事ですが、わたしたちの生活の糧となる様々なビジネスを展開する母体となる企業(事業所)・団体の危機管理は、第一義的には自己責任、自助努力だということを、今回のコロナ禍は改めてわたしたちに認識させることでしょう。
何故このタイミングで、こうしたコラムを書くのかといえば、こうした過度のストレス状態になると、人間は当たり前の原理・原則を忘れられがちになるからです。
「緊急事態宣言」が出ても、狼狽えることなく、ここは落ち着いて、自らしっかり備え、乗り越えたいところです。
※ コロナ禍下における経済対策を巡る詳細については、過去のコラムをご参照ください。https://prri.kyodo-pr.co.jp/opr/627/